オペラ鑑賞はスポーツにも似て…


4演目のオペラ鑑賞を終えて、母は土曜の晩に飛行機に乗って、
日曜に無事自宅に着いた模様で、ホッとしています。
9月に事故を起こした時は、
今回の母の渡仏時は、一人で行動してもらうことになるかと思いましたが、
なんとかいつも通り同行できて、よかったです。
でも事故後初めての、人ごみの中での本格的活動、
予想を裏切らず、風邪をひいて具合が悪くなり、今はお休みモードです。
パリの前半はお天気がよかったのですが、後半は雨と冷たい風、
何よりもお部屋の空調の風が乾燥していて、それにやられてしまったようです。
上からと下からのトイレ通いで、ダウンな私、
娘を連れてクマが迎えに来るまで、
最後のお掃除やごみ出しは、母にやってもらう始末でした… やれやれ。

体調のことを除けば、Y嬢とのさよならもゆっくり言えたし、
4つのオペラも4つともそれぞれ違ったムードで楽しめて、
大変よかったでした。

いつも3月に1年分の席をまとめて頼むのですが、
「高齢の母がわざわざ日本からやってきて、それだけが楽しみで生きているので、
なんとか母の願いを叶えて、一番前の席を取ってやりたい」 
と毎回涙ながらにしつこい手紙を書き、
小澤征爾氏のような日本人の指揮するものなど、よっぽど混んでいるもの以外は、
なんとか希望通り、最前列をゲットできています。
でもこのお願いの言葉はいまや決して大げさではなくて、
母は、パリまでの一人旅、無事にいい席でのオペラが観れるように、
プールに通って水の中で歩いたり、万難を排して臨んでいるようです。

私はパリが大嫌いなので、母がもうすぐ来ると思うと毎回憂鬱になるのですが、
一体いつまでこれを続けられるかと思うと、
やっぱり喜んで帰ってもらいたいと、萎えた気持ちを奮い立たせるのであります。

母に付き合う、このオペラ三昧ももうかれこれ3年目。
いつも最前列の私は、中学高校とクラリネットを吹いていたので、
自然とオケの方に目が行きます。
そして昨年から、クマに似た風貌がきっかけで(動機が不純よね~)
クラリネット奏者のフィリップ・キュペール氏のファンになり、
彼の個人的なCDを買ったり、6月には、田舎のシャトーで行われるコンサートにも
お友達を誘って行ったりしました。
彼も情報提供のために、私にメールアドレスや携帯の電話番号まで下さって、
なんかとっても恐縮なのであります。
他にも第一バイオリンのフレデリック・ラロックさんは私のことを覚えていてくれています。
ネットで検索すると、パリ国立オペラ管弦楽団の日本人バイオリニスト
大島莉紗さんのブログにも行きつきました。
こちらでいろいろ裏事情を知ることができて、ミーハーファンの私は本当にうれしいです。
今回初めてお声をかけさせていただきました。
こうして、だんだんオケのメンバーの皆さんと顔見知りになってきてしまっています…

初日に見たのは、お馴染ヴェルディの「リゴレット」。

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パリのいわゆるオペラガルニエ宮で上演されるオペラは少なく、
この日も、集客数の多い、バスティーユの方でした。

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最前列で開演を待つ母。

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最後のカーテンコール。
クラシックな演出で、正統派なヴェルディが満喫できました。
衣装がとても美しかったです。

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指揮者の譜面台に残る、楽譜最後の部分。
カラフルな書き込みで、おもわず写真撮っちゃいました。


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2日目は、「かしこい女ぎつね」。
子供たちに大好評。大人が席を取ると子供の分はプレゼントというキャンペーン中でした。
小さい子が多いのに、みんな叫んだりしないで静かに観ていられて偉いな~と思いました。

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2枚目の幕にこうして絵が描かれていて、お話の進む具合を、説明してくれています。

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この日の席については、オペラ座よりお便りが来て、
私達の席に撮影のためカメラが入るので、移動してほしいということでした。
一瞬見られないのかとどきりとしましたが、席の移動だけでよかったです。
そして代わりのチケットがなかなか送られてこなくてハラハラ、
私が家を出る前前日にやっと届きました。
上の写真の会場中央にもカメラが据えられているのがお分かりでしょうか?
全部で10台くらいありました。
ハイビジョン用のカメラで、バイクのハンドルのようでした。

代わった新しい席は、指揮者の真後ろ。
フランス国営放送局フランス2とNHKによる撮影なので、
来年日本でもテレビでやると思われますが、
指揮者が映る時があると、母や私の顔がよく見えてしまうかも~~~~!!!

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3日目が、ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」。
7月に日本にも行って上演されたものです。

オケには緑組と青組みがあるそうなのですが、
今回前半2つは、もう一つのグループで、
後半2つが、やっと私のお目当てのキュペール氏、ラロック氏、大島さんの演奏です。


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左から2番目が、準備をするキュペール氏。
彼らがオケボックスに入ると、私はもうオペラに目がいかなくなっちゃって、
対訳も一番前の席からだとものすごく上を向かないといけないので、
読んでいることもできず、ストーリーになかなかついていけません。
世界でその名の通った有名な歌手が歌っているというのに、それも上の空で、
オーケストラばっかり見ちゃいます。

前日パリからアップした前回のブログでは、
これは長い演目と書きましたが、
休憩時間は40分と30分で、60分というのはウソでした。
この日は初日に当たるので、みんな緊張気味。
最初キュペール氏は私を覚えてくれてなくて、涙
幕間に私が叫ぶと、じっと私を見て考えてくれて、
やっと私のことを思い出してくれました~♪ 笑
夏には、日本にも行ってらっしゃるし、いったいどこのアジア女性だっけ? 
と 思ったのでしょうね。

スクリーン映像とオペラの共演=競演。
日本でも批評は賛否に分かれていました。
演出の、ピーター・セラ-ズ。今回、初日とあって、カーテンコールに登場。
いつもブーイングの嵐ですが、ブーイングと同じくらいブラボーも聞かれたので、
評価も高かったものだと思われます。
私はとにかくオケも見なきゃいけないし、歌も聞かなきゃいけないし、
抽象的なスクリーン映像が表現しているものについても考えなければいけないしで、
5時間以上の上演があっという間でした。

ただ言えるのは、ワーグナー鑑賞は、ほんと、エネルギーがいる、疲労困憊… 
というのは確かですね。

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そして最終日は、オペラ喜劇の「売られた花嫁」。

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バスティーユでなくて、オペラガルニエでの上演でした。
いつもプログラムを入り口で買って、その日のオケのメンバーの名前をドキドキしながら見て、喜んだり、がっかりしたりしています。
この日もキュペール氏たちでした~♪
前の晩の真夜中までのトリスタンの演奏の翌日で、私たちも疲れていますが、
お仕事とはいえ、オケの皆さんも大変ですね~。
でも今日はとっても陽気な楽しい演目。
オケがボックスに入って来る時からして、雰囲気が違います。

ガルニエの最前列は、バスティーユよりもオケに近くて、うれしいです。
舞台を見ずに、キュペール氏ばかり眺めている私の熱い視線は、
第一バイオリン、ラロック氏の上を通ることになります。
ラロック氏の位置からは私は指揮者と反対方向、振り返ることになるというのに、
彼は何度も私の方を向いて、目くばせやウインクをしてきます。笑
ラテン系の典型、陽気な性格の方なのね~。
キュペール氏はいたって真面目な方で、そんなことしてくれません。

幕間でキュペール氏が近寄って来てくれて、
前の晩、すぐに私のことを思い出せなかったことを謝ってくれました。
そんな~。恐縮です~。

この「売られた花嫁」は、私にとって、
去年の「愛の妙薬」と同じくらい楽しいすばらしい作品という印象が残りました。
去年も重いワーグナーは「タンホイザー」を観ていますが、
ああいうどっしりものもいいですが、
こういう軽いのもとっても楽しめて、とても好きです。
でもこの序曲はコンクールの課題曲にもよくつかわれる有名なもの。
速いテンポでとても難しいフレーズを、いとも簡単げに、弾いてしまう
オケのメンバーはさすがです。素晴らしかったです!
みなさん、国際的なコンクールで数々の賞を取り、
個人的にCDを出したり、コンサートをしたり、音楽学校の先生をされている方々。
その人たちの音が一つになるのですから、素晴らしいのは当たり前ですよね。
その上に国際的なオペラ歌手が歌をのせて、
有名な指揮者がそれをまとめて、
多くのアーティストたちによる、衣装や舞台装置が加わって…
オペラは本当に芸術の総合ですね。
毎回本当に感動なのであります。


この4回目を観ている時から、私の体調はますます悪くなってきて、
その晩は苦しみました。
翌朝クマが迎えに来てもらうまでは頑張らねば~、と思うも、
身体はいうことをきかず、
クマの娘もパリでパパにお買い物をしてもらうのを楽しみにしていたので、
それになんとか付き合い、母を空港に届け、
今回は免税品もないので、ANAのチェックインが始まる前に、
彼女を残してオルレアンに向かう帰路に着かせてもらいました。

昨日今日と薬を飲んで、ゆっくり静養しています。
美術館に行く時もそうですが、芸術の鑑賞は、
スポーツをする以上に、体力、気力勝負ですね。
スポーツは力の出し加減を自分でコントロールできますが、
芸術は相手からのパワーの強さがどんなものかわからないので、
相当構えて、それを受け止められないといけないですからね。

うちに帰って、オオキミとラッキーちゃんとベラちゃんに癒してもらって、
暖炉の前でのぬくぬくが本当にありがたくシヤワセです。
今週はちょっとゆっくりすることにいたします。

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by tchierisu | 2008-11-04 02:18 | パリオペラ