山報告 トレーニングのシャモニ編 その2
2007年 08月 16日シャモニ2日目のトレーニング。
実は前日シャレ・ラ・フローリアのミカエラがオレンジーナをご馳走してくれたので、
『明日もまた来るね...』って言ってあったのですが、
暑かったしな~ と朝ぐずぐずしていました。
グランドジョラス北壁、冬季日本人初登頂の記録を持ち、
ギネスブックのもその名が載る、山屋なら彼を知らない人はいない、
私の上司でもある、K家のYさんに、
『これから山やりに行こうって人が、ぐずぐずしててどうする!
景色も違えばまた楽しいから、今日はモンターベールにでも行って来たら?!』
と、一喝され、はいはい、とばかりに、出発いたしました。
こんなところが、元を糺せば体育会では全く無い私であります。
K家のすぐ横を流れる、シャモニ谷のアルブ川。
氷河からの水なので、白濁しております。
夏なので、氷河を溶かした水がたくさんで、ドウドウ流れて、橋の上は涼しいのです。
11年前には洪水でシャモニの町の中心が大変なことになりましたっけ...。
シャモニからスイスの国境を越えてマルティまで行く電車。
これもK家のお風呂場から見えます。
毎日、モンブラン山塊で遭難した人たちを、捜索、救出に行く
ヘリコプターが発着するヘリポートの横を過ぎて、
電車でも行けるのでお馴染みのモンタンベールを目指します。
もう何回お客さんをお連れして電車で登ったか数えられませんが、
足で登るのは2回目です。
Yさんのアドバイスは正しかった!
こっちの方が日陰の中を歩くので、涼しいのです。ほっ。
たとえお年寄りでも、山慣れた人は軽装で、ひょうひょうと
レギュラーな歩きで止まらずに、私はどんどん越されていきます。
途中で出会った私より年配のカップル。
いつも私が休むところで休んで、お話します。
そういうことがあると気が紛れて、苦しみが忘れられます。
途中の分岐で、アドバイスをもらって、彼らと同じコースを行くことにしました。
前日買ったパワージェリーも試しましたが、甘すぎて、飲めた代物ではありません。
これは持っていくのは止めようか?
いろいろテストにもなります。
昨日よりは太陽から隠れられて、歩きやすいとは言え、やっぱりとっても苦しいです。
でもがんばって登って谷の向かいを見ると、昨日登ったフレジェールがよく見えます。
今日の方が1913メートルと、ほんのちょっと高くなるのです。
電車で来た人たちで賑わう、ホテルモンタンベール。
19世紀?もっと前? からの歴史あるホテルです。
当時はスカートをはいた貴族のマダムが、今日私が登ってきた道を、
ロバなどに乗って、ここまで来たのです。
レストランもなかなかです。
周囲には、自然博物館なんかもあります。
アプト式の登山電車。
以前、山のモチーフの刺繍作品の記事にも書きましたが、
シャモニには大きく3つの針峰群、プラン・ブレティエール・グレポンがありますが、
その中の全てのどんなに小さいトンガリにもいちいち名前がついていて、
ここに見える針峰のうち、左の方の高いのが、私のお気に入り、
グレポンの中の、AIGUILLE DE REPUBLIQUE=レプブリック針峰 であります。
一番左の端にあって目立つので、遠くからでも探しやすいでしょ?
10年前と比べて、メールドグラス氷河がなんてやせてしまったのでしょう。
地球の温暖化を考えずにはいられません。
奥のグランドジョラスは、今日は雲の中ですね。
昨日は暑くて、食欲もなく、サンドイッチも食べたくなかったですが、
今日はおなかが減ってきて、ちょっとは山に慣れてきたかな?
この下のテラスで、高いサンドイッチとまたオランジーナを買って、
半分食べました。
登ってきたカップルのご主人のお勧めの通り、
今日は、氷河の跡=モレーン側の道を降りていくことにしました。
モンタンベールから歩いて降りるのは初めてです。
いつも電車で帰ってました。
でも駅はK家から遠いし、下りの練習もしないとね。
下り初めてさっきサンドイッチを食べてたテラスの隣に見えるのが、
氷河まで降りるゴンドラ。
ゴンドラで降りる皆さんのお目当ては、氷河の中に作られた氷の洞窟。
シャモニで、登山電車の往復+洞窟行きゴンドラの往復をセットで買えます。
ゴンドラの下にいくつも穴が開いているのが見えますか?
氷河は流れて動いているので、毎年穴は新しく開けられます。
古い洞窟はつぶされてしまうのです。
中の展示彫刻も毎年新しく作り直されます。
でも私はツェルマットのクラインマッタホルンの氷の洞窟の方が、よくできていると思います。
ごめんなさい、シャモニの関係者の皆さん。
メールドグラスの先っぽのモレーン側を歩くと、
ドリュがこんな風に迫って見えます。
LES DRUS と複数形なのは、二つ並んであるからです。
クライマーの憧れの岩です。
いくら見ていても見飽きません。
モレーンはこんな不思議な、ちょっと赤みがかった色をしています。
その上に木が生えて、何か人工的に造られたお庭のようで、とっても美しいです。
はしごもちょっとあって、楽しい山道です。
遠く谷底には、プラの町のゴルフ場も見えます。
あそこまで降りるのよ~。
25000分の1の地図にもここまでの道のりがはっきり書いてありませんでしたが、
最近(って言ってももう数年経っていそうですが)ここ、
LES ROCHERS DES MOTTETS という茶店ができていました。
知らなかった~。
ここからのドリュは、本当に美しかったです。
かなりの時間たたずんで見てしまいました。
この茶店のお庭は、これまたきれいに造ってありまして、
なんと人工のお池に噴水までありました。
こんな雄大な山の景色の中に、ちょっとやりすぎって感じで、興ざめでしたが、
昨日のシャレ・ラ・フローリアは電気は無いけど、
ミカエラさん夫婦は車で里まで行き来できるのに対して、
ここはモレーンの岩でできている地盤で、道は無く、
かなり下の方に車を停めて、歩いてしか来られないところなので、
このお庭を作った努力は、認めてあげたいというものです。
その後も、『まだこんな高いところ?麓が遠い~』と声が出てしまうほど長く感じた下りで、
腿が翌日もその次の日も、かなり長いこと筋肉痛で、
本番のトゥール・デ・グランコンバンに響いていました。
シャモニの町に戻り、またお店巡りで、腰につける水筒を買ったり、薬を揃えたり、
お友達がパリに夜行の寝台で戻るというので、駅まで送ってあげて、
夜は、日本の有名なクライマーさんや、他のお客様をK家にお招きして、
みんなで楽しくお食事しました。
ほんとK家に来ると、皆さんからの最高級のお土産のお相伴に預かれて、
日本から直輸入の、おいしい塩辛や明太子をこの日もいただきました。
そんな意味でも私にとって、一番日本に近い場所なのです。
そうそう、次男もパリでゴルフの予選落ちして、帰ってきて、
久しぶりに一緒でした。
ローヌアルプで3位で、鼻高々でフランス全国大会に臨んだのに、
1日目、プレッシャーでいいスイングができなくて、
18ホール目でやっとどこが悪いか自分で気がついたのだそうです。
でももう上位に入るには程遠くて、惜しくも予選落ち、
最終日まで残ることなく帰ってきたという訳です。
全国大会の壁は高かった...
いつも漂々としている彼でもプレッシャーを感じることがあるのね。
まあ、16歳の夏、これで上位に入っていたら、
もっと自信満々になっていたかもしれないので、
いい経験だったね、負けてよかった、彼の成長のために...と、
パパとママと話していました。
シャモニでは、本当はもっとお目にかかりたい方々がいらっしゃったのですが、
やっぱり本番前の緊張で、ゆっくりお酒なんか飲める雰囲気ではありません。
また時間があったら、帰りに寄ることにいたしましょう。
いよいよ翌日は、パリから電車で到着するSさんを、
スイスのマルティニの駅でピックアップ後、
バーニュの谷の奥、フィオネイに入ります。
シャモニでの2日間のトレーニング、本当にやっておいてよかったです。
800メートル、900メートルの標高差の上り下りがどれくらいの感じか、
自分がどれだけハアハアすぐ息が上がって、苦しむか、
苦手な暑さに対して、水はどれくらい必要か、
オルレアンの平地でオオキミと早歩きしたり、
部屋の中でステップ踏んでたりしているだけでは全くだめで、
やっぱり山に入らないと分からないことがよくチェックできました。
すごくまずいパワージェルを『あんなの飲めないから置いていく』と言うと、
Yさんから、『いや、持って行け、あれをチュッチュしながら歩かないと、もたないぞ!』
とアドバイスされ、また荷物に戻したり...。
しかしながら翌々日から始まる本番は、
こんなシャモニでのトレーニングレベルをはるかに上回る過酷なものであったのです。
この時点で、それは自分でも充分想像がついていて、
それ故に緊張しまくっていたのであります。
次回はいよいよスイス入りです。
...つづく...
by tchierisu
| 2007-08-16 03:43
| 山歩き