ご趣味は?「クロスステッチです」 作品 その1

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DMCキット 「Les Tulipes」 13X35㎝ アイーダ生地 

以前「ご趣味は?」と聞かれれば、「音楽」とか「山歩き」であった。
しかし今は、立派に「クロスステッチ刺繍です!」と答えられる。
そうなった事の成り行きをお話しします。

4年前の秋。
東京の友人が転職前の長期休暇で、フランスに遊びに来ていた。
うちに来た彼女「やっぱりフランスは刺繍よね...」などとぶつぶつ言いながら
パリのBHVで買ったというクロスステッチのキットをちくちくやっている。
出来上がると枠がそのまま額になるという、かわいい猫ちゃんのモチーフである。
小学校の家庭科の時間に、ちょっと刺繍はやらされたものだったが、
それ以降、私はやったことがない。
彼女がやっているのを見ても
「なんてババくさい趣味?」と最初は笑っていた。
でもなんか一生懸命やっているので、しばらく見ていた。
そして「明日、そんなキット売ってる店があるから行ってみよう」ということになった。

翌日行ったのは、今流行の、手作りものの材料屋さん。
美術の画材もあるし、ビーズやモザイクのタイルなんかも売っている。
刺繍のコーナーに行くと、DMCという刺繍糸で有名なメーカーのキットがたくさんあった。
私もひとつやってみようか...という気が起こり、
あんまり難しそうでないのを選んで、29ユーロ払って買ってみた。
家に帰って開けて見ると、中には
アイーダというクロスステッチ用の布と針1本、29色のカラフルな刺繍糸がたくさんと、
ダイアグラムという図案とフランス語の説明書が入っていた。
説明をを読むと、まず布を4つに折って、真ん中の点に図案の真ん中が来る様に
そこから刺し始めると書いてある。なるほど。
友人が言うには
「何でもいいから、ばってんになるようにやっていけばいいのよ...」とのこと。
ふん、そんなもんか。
でも何本取りでやればいいのだろうか?
見てみると各糸に3とか4とか6とか数字が書いてある、これが刺す本数なのか?
何でもいいから試しにやり始めた。

スーッと糸が布を通る感じが快い。
糸が輝いてとても美しい。
何色か糸の色を変えて進んでいくと、だんだん絵画のようなモチーフが現れてくる。
まるで印象派の画家になったようだ。

でもなんかおかしい。
やたら分厚くできてしまって、色を変えても、他の色に埋まってしまってよく見えない。
刺すのも次第にきつくなってきて畳屋さんみたいになる。
いくらなんでも、こんなはずは無いだろう
?????
もう一度注意深く説明を読んでみた...。
!!!!!
そしてやっと間違えに気づいた。
全部2本取りでやるようだ。(爆)
もう一度ハサミで切ってやり直しだ。
でもすでにじゅうたんの様に分厚くなってしまった糸を切って解くのは容易ではなかった。
糸も大幅に足りなくなった。
そしてお裁縫屋さんに行って、同じ番号の糸を購入した。

今このエピソードを思い出すと、なんて馬鹿な間違いをしたものだと、あきれてしまう。(恥)
今だから笑えるので、書いてしまった。

この友人のお陰で、その後はすっかりクロスステッチにはまってしまった。
彼女滞在中、私が台所に立って、彼女が自分の刺繍を眺めていると、
「ずるい、刺繍をしないで、手伝え」
「刺してないのよ、次どこやるか見るだけもだめなの?」
「だめ!」
なんて場面もあった。
冬の寒い最中で、音楽もかけずに、暖炉の薪のはじける音と、
2人の刺繍糸が布を通る音だけが聞こえてきて
「静かね...」って言ったものだ。

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その時はじめたのがこの作品。


最初のひどい間違いは左から2番目のピンクの真ん中あたり。
解き終わったアイーダはよれよれだった。
その後、右に黄色、赤、最後に一番左の紫と進んでいった。
今でもピンクを見ると、目が揃ってなくて、初心者振りがうかがえるという
記念すべき1作目。
でも黄色~赤~紫に至っては、明らかに上達が認められる。
自画自賛の大いなる自己満足である。
私は絵心が全く無く、美術は大の苦手であった。
よくノートの端に落書きみたいに、でもすごく上手に絵を描いてしまうようなクラスメートに
羨望の眼差しを投げていたものだったが、
クロスステッチは、ダイアグラムに書かれた通りにひたすら忠実にやって行きさえすれば、
ひとつの自分の「作品」と呼べるものが出来上がる。すごい。
額装をお店に頼んで、出来上がって、壁に飾った時は
いっぱしのアーティストになった様で、生まれてはじめて味わうも感動であった。

その後日本に帰った友人から
「Tchierisuさんみたいなきちんとした性格の人に向いているわよね、これ」とおだてられ、
ますます熱が上がった。
アドリブとかアレンジとかのセンスが全く無い私に向いていると自分でも思う。
その頃はパリとオルレアンの2重生活で、
行き帰りのSNCFの中や、パリの狭いステュディオでも夜な夜な、
寸暇を惜しんでチクチクやったものだ。

仕事が始まった東京の友人の話では、
「猫ちゃんのあとに...」と私のチューリップと一緒に買って、
フランスで刺し始めたDMCの4つのティーポットのキットが、
1本取り、1目ずつ、白だけがビヤーっと続く様な所もあって、
忙しい生活ではなかなか捗らずにいるということである。
「やっぱり刺繍はフランス」なのだそうである。
確かに、最低1時間半くらいは落ち着いてじっとできないと、
クロスステッチは面白くないかもしれない。

そうそう、その友人が猫ちゃんのキットを、他の友人宅で朝から刺していると、
そこのお母さんに、
『みんな~。OO(彼女の名前)はもう働いているわよ~』と言われたそうである。
そう、刺繍は仕事なのである。
私は一時パソコンのゲームに熱中したことがあった。
トゥームライダーのララ・クラフトが私のアイドルである。
徹夜になるまでやってしまう熱中度や、
何もしないでそんなことばかりしているという罪悪感度は、
私にとって、今の刺繍も当時のパソコンゲームと同じものである。
でも他人はそうは見ていないようである。
ゲームはJOUER=プレイという動詞で、遊んでいると扱わわれる。
でも私も刺繍をしていると、「えらいわね、仕事している」とフランス人は扱ってくれて、
私にとっては同じ快楽なのに、ゲームとは大違いである。
偉い人になったみたいで、こちらの方がずいぶんと肩身が広い。
ちなみにブログなんかのパソコンも、割と良いことだとは思われず、
クマは私がパソコンじゃ無くて、刺繍をやって、それが捗っているのを認めると、
褒めてくれて、機嫌がよくなる。

ミクシィのクロスステッチ・マニアックというコミュニティに参加している。
目からうろこのテクニックや、
フランスではあまりお目にかかれないキットなども紹介されて、とても興味深い。
『クリスマスものをイヴまでに仕上げて写真発表をしよう』というイベントにも参加して、
現在、焦って『爆刺こく』日々である。(コミュのどなたかが使っていたマイブームの台詞)
そこで出会った方々にたくさん足跡を残している。
また、その方達が私のところに足跡を残してくださっている。
きっと私の作品を見に来てくださったのだろう。
でも今まであまり作品を発表できていなかったので、
今回のこの1作目から始まって、これから折々見せびらかして行きたいと思う。
どうぞよろしくお付き合いくださいませ~。

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by tchierisu | 2006-10-17 05:38 | クロスステッチ